補助金事件のあと、なぜか覚醒した人がいた
補助金フォーム事件から数日。
怒られたはずのミスリーダーは、なぜか逆にスイッチが入っていた。
「やっぱりこの会社、情報共有ができてないんですよ!」
昼休み。
誰も頼んでいないのに、ミスリーダーはホワイトボードを引っ張り出してきた。
「だから、これからは“共有ノート”を作ります!」
——その瞬間、
職場に誰も拍手しない改革が誕生した。
誰も求めていない「共有」が始まる
ミスリーダーが作ったのは、日々の気づきやミスを書き込む“共有ノート”。
本人は完全に前向き。
「小さなミスを可視化すれば、みんな成長できると思うんです!」
……理屈は正しい。
ただし、中身が終わっていた。
- 「イラ神さん、昼休み前にイライラしていた件」
- 「ぶりっ子ママ、資料の並べ順を独自ルールに変更」
- 「サボりん、コピー機前で10分立ち話(業務中)」
もはや業務改善ではなく、
観察日記。
スマッコが苦笑いしながら言った。
「それ、“共有”っていうか……告発じゃない?」
でもミスリーダーは真剣だ。
目がキラキラしている。
静かに悪くなる空気
当然、職場の空気はじわじわと悪化する。
ぶりっ子ママは、例の調子で言う。
「私、知らないうちにそんなに悪目立ちしてたのかなぁ〜?」
声は可愛い。
でも目は完全に牽制。
イラ神は、ノートをチラ見してぼそっと言う。
「……また士気下がること始めたな」
サボりんは何も言わず、距離を取るフェーズに入った。
誰も止めない。
なぜなら、止めるのも面倒だから。
そして、最悪の人物に見つかる
そんなある日。
その“共有ノート”が、ついに社長ポンの目に入ってしまった。
ポンはページをめくりながら、なぜか満足そうにうなずく。
「おお、これいいじゃないか!
会社の“課題の見える化”だな!」
……誰も、訂正しなかった。
翌週から、そのノートは正式ルールになった。
全員が、日々の「気づき」を書くことになった。
初日にサボりんが書いた一言。
「この制度自体が一番の無駄だと思います。」
イラ神はため息混じりに言った。
「やる気とやらかし、また混ざってるぞ……」
それ以降、社内では
誰かの些細なミスも「気づきました」と記録されるようになった。
最近この職場で一番うるさいのは、
パソコンのファンでも、イラ神の舌打ちでもない。
——ミスリーダーの「気づきました」だ。
そして、この“気づき文化”は、
まだ一番やってはいけない場所に届いていないだけだった。

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