午後2時。有給のはずの二人が、なぜか同時に戻ってきた
午後2時。
職場のドアが開く音がした。
「あれ? イラ神さん?」
「えっ、ぶりっ子ママも?」
有給のはずの二人が、まさかの同時出社。
しかも、どこかスッキリした顔つき。
軽く巻いた髪、整ったメイク。
そして、ほぼ同時に重なる一言。
「いや〜、午前はちょっと出かけてて〜」
なぜか達成感だけは一人前
イラ神が大きくため息をつきながら言う。
「ほんっと疲れた〜! 朝からバタバタでさ〜。
でも、資料の件も片付いたし、よかったよかった!」
ぶりっ子ママも負けじと続く。
「私も〜♡ 旦那も子どもも置いてきちゃったから、もう大変で〜。
ほんと、こういう日くらいゆっくりしたかったのに〜」
――“こういう日くらい”。
自分で忘れた資料を、他人に取りに行かせた日である。
フィル姐が、背後から小声で。
「ゆっくりしたかったなら、まず反省してほしいよね」
軍曹も静かにうなずく。
「休みの日に人使って、出社して愚痴って……もう才能の域」
机に置かれた「手土産」がすべてを物語る
二人が机に置いた手土産。
ぶりっ子ママの前には、
上品な箱入りの「小田原・鈴廣のかまぼこ」。
きちんと冷えていて、
包装紙の折り目まで完璧。
一方、イラ神の机の上には――
スーパーの袋に入った、
「蒲鉾風おつまみ・3個入り(298円)」。
“風”が、じわじわ効いてくる。
軍曹がぽつり。
「……一緒に行ったのに、なんでお土産ランク分かれてんの?」
フィル姐が即答。
「愛は見えないけど、価格差で関係性は見えるわね」
全員、必死に笑いをこらえる。
感謝の皮をかぶった、説教タイム
その後も、二人は延々としゃべり続け――
しまいには、イラ神がドジリーナに向かってありがたい一言。
「いや〜助かったよ。
でもさ、次からはちゃんと確認しようね?
ほら、経験って大事じゃん?」
ぶりっ子ママもすかさず被せる。
「ほんとごめんね〜♡
でも、行ってもらって正解だったと思う!
私たち行ってたら、おしゃべりして帰ってこれなかったし〜!」
……いや、それ、もう自白。
そして、息ぴったりの同時退社
夕方。
「じゃ、私このあとちょっと寄るとこあるから〜」
「私も〜。方向一緒だね♡」
まるで息の合った漫才コンビのように、
同時退社。
ドアが閉まる音のあと、沈黙。
軍曹がぽつり。
「……この二人、“愛と資料”でひとつのジャンル作れるね」
チェック閻魔も続く。
「資料より、愛の方が先に納品されてるっぽいけど」
最後に、フィル姐が締める。
「まぁ、どっちも“忘れ物”から始まってる時点で、この職場っぽいわ」
笑いが広がる中、ドジリーナは机の上の書類を静かに整えた。
(とりあえず、今日も無事に終わった……のかな。)

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